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ある善人の話

2010年02月27日

うちの母は、住用村(現・奄美市住用町)の○○というところに生まれました。

村でも真面目な働き者として評判だった木こりの祖父とやさしい祖母。母はすごくのびのびと育ったそうです。

その集落では、時々、青年団がよそからきた人と酒席でケンカになると、集団リンチにすることがあったそうです。

そんな夜は村中が張りつめた空気に包まれ、祖母は子供たちを決して窓に近寄らせませんでした。

しかし外から聞こえる怒号、助けを求める悲鳴は、家の中までも聞こえてきたそうです。

ある時、母は興味本位に覗いてしまったそうです。

青年団のおじさんが、血だらけの知らない人の髪をひきづり、山肌からあふれる水をかけていました。

人間とは思えないほど腫れてゆがんだ顔。その人は、ピクリとも動きませんでした。

母は言います。「あの人はどうなったんだろう・・・・・他にリンチされた人たちも、次の日にはいなくなってたから・・・警察もこなかったし・・・・・・・・」

それを知るすべは、もはやありません。

ある夜、営林署の方が青年団とケンカになったと、また祖母が緊張した表情で窓をしめきりました。リンチの途中で一人が逃げ出したと、集落の出入り口にたいまつをたいて、青年団が総出でさがしているようでした。

その深夜、母はトイレに起きました。当時はトイレは外の離れにありましたので、ねぼけながら外にでると、トイレのかげ、外から見えない位置に、うずくまる真っ黒な人影があります。

「おっかーん!!!けんむんがでたー!!!」と母が祖母をおこすと、祖母は瞬時に事態を察したようでした。

祖母は真っ黒な人影に話しかけました。

「かくまってあげるから、こっちにきて」

それは、逃げ出した営林署の人でした。川にとびこんで逃げたらしく、ずぶ濡れで震えていました。

祖父を起こして事の次第を話すと、祖父も「絶対青年団にわたしてはいけない。ここでほとぼりがさめるまでいてもらおう」

お風呂に入ってもらっている間にご飯を用意して、祖父の寝間着をさしだすと、その方ははじめて安心できたらしく、泣き出したそうです。

結局その方を家で一週間ほどかくまい、その間は母も子供ながらに緊張していたそうです。それはそうでしょう。なにせ、集落の人が遊びにくる襖へだてたむこうに、その方が息をひそめていたのですから。(それだけ狭い家だった)

祖父が中心部の名瀬から知人の車をたのんで夜中に村から脱出させるときに、家族みんなで泣いて別れたといっていました。

その方からは、のちのちまでお礼状や季節の贈り物、年賀状などが届いたそうです。

村の人間にバレたら自分たちも村八分になる危険のなか、それでも助ける勇気。

私は、祖父と祖母が大好きです。

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Posted by アマミちゃん(野崎りの) at 01:10│Comments(0)聞きかじり・読みかじり
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